東京地方裁判所 昭和52年(特わ)2819号 判決 1978年3月20日
本店所在地
東京都渋谷区代々木一丁目一四番三号
株式会社 安藤
(右代表者代表取締役 松谷貞二)
本籍
東京都福生市本町六四番地
住居
同市本町二一番地
会社役員
松谷貞二
大正一一年七月二六日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官河内悠紀出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社安藤を罰金一二〇〇万円に、被告人松谷貞二を懲役一年にそれぞれ処する。
被告人松谷貞二に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社安藤(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、製材及び家具の製造販売、店舗設計及び室内装飾の設計施工並びに飲食店、風俗営業の経営等を目的とする資本金一〇〇〇万円(昭和五〇年六月一〇日以前は三〇〇万円)の株式会社であり、被告人松谷貞二(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役(昭和五二年五月九日以前は取締役)としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空外注費等を計上して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四九年四月一日から同五〇年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六〇九五万六三四八円あつた(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月三一日、東京都内から同都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署長宛、その所得金額が七三一万五〇〇三円でこれに対する法人税額が一八七万四九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五三年押第三二五号の符号一)を郵送により提出し、そのまま納期限を徒過させ、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二三二六万六三〇〇円(税額の算定は別紙(三)の一計算書参照)と右申告税額との差額二一三九万一四〇〇円を免れ、
第二 昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八六一九万六二一三円あつた(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月三一日東京都内から前記税務署長宛、その所得金額が一二一九万〇九三三円でこれに対する法人税額が三五〇万七六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号二)を郵送により提出し、そのまま納期限を徒過させ、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三三〇七万五〇〇〇円(税額の算定は別紙(三)の二計算書参照)と右申告税額との差額二九五六万七四〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
第一 判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一 被告人の当公判廷における供述並びに大蔵事務官に対する質問てん末書四通(乙4ないし7)及び検察官に対する供述調書(乙8)
一 上杉輝雄の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(甲一16、19、20)及び検察官に対する供述調書(甲一21)
一 登記官作成の登記謄本(甲一1)
第二 別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、
(イ) 工事収入(別紙(二)<1>)につき
一 大蔵事務官作成の工事収入調査書(甲一2)
(ロ) 外注費(別紙(一)<11>、同(二)<12>)につき、
一 大蔵事務官作成の架空外注費調査書(甲一3)
(ハ) 現場経費(別紙(一)<12>、同(二)<13>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外現場経費調査書(甲一4)
(ニ) 役員報酬手当(別紙(二)<14>)、給料手当(別紙(一)<13>、同(二)<15>)、損益計上役員賞与(別紙(一)<54>、同(二)<52>)につき、
一 大蔵事務官作成の給与手当調査書(甲一5)
(ホ) 交際接待費(別紙(一)<14>、同(二)<16>)につき
一 大蔵事務官作成の簿外交際費調査書(甲一6)
(ヘ) 旅費交通費(別紙(一)<16>、同(二)<18>)、福利厚生費(同(一)<17>、同(二)<19>)、水道光熱費(同(一)<18>、同(二)<20>)、通信費(同(一)<22>、同(二)<24>)、公租公課(同(一)<28>、同(二)<30>)、雑費(各<35>)、住民税認定損(同(一)<61>、同(二)<59>)、社会保険料認定損(同(一)<62>、同(二)<60>)、会費認定損(同(一)<63>、同(二)<61>)につき
一 大蔵事務官作成の諸経費調査書(甲一7)
一 同福利厚生費調査書(甲一8)
(ト) 賞与引当金繰入(別紙(一)<33>)、賞与引当金戻入(別紙(二)<46>)につき、
一 大蔵事務官作成の賞与引当金の損金算入調査書(甲一9)
(チ) 受取利息(各<38>)につき、
一 大蔵事務官作成の預金残高および受取利息調査書(甲一10)
一 同貸付金残高及び受取利息調査書(甲一11)
一 同前受利息調査書(甲一12)
(リ) 支払利息(別紙(一)<41>、同(二)<40>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外借入金残高および支払利息調査書(甲一13)
(ヌ) 交際費損金不算入額(別紙(一)<55>、同(二)<53>)につき、
一 大蔵事務官作成の交際費損金不算入額調査書(甲一14)
(ル) 海外渡航費(別紙(一)<59>、同(二)<57>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外海外渡航費調査書(甲一15)
(ヲ) 営業謝礼(別紙(一)<60>、同(二)<58>)につき、
一 松谷貞二他一名作成の「簿外で支払した営業謝礼(リベート)等について」、「簿外で支出した営業謝礼(リベート)等のうち支払先を明示できないものについて」と題する各上申書(乙1、2)
(ワ) 受取家賃(別紙(二)<62>につき、
一 前掲甲一16の第二九問答
(カ) 預金利息源泉税(別紙(二)<63>)につき、
一 大蔵事務官作成の預金利息源泉税調査書(甲一17)
(ヨ) 期首未成工事支出金(各<64>)、期末未成工事支出金(各<65>)につき、
一 松谷貞二他一名作成の昭和五二年五月一〇日付申述書(乙3)
(タ) 事業税認定損(各<66>)につき、
一 大蔵事務官作成の事業税額調査書(甲一18)
第三 別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、
一 押収にかかる被告会社の法人税確定申告書二袋(昭和五三年押第三二五号の符号一、二)
(法令の適用)
法律に照すと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金一二〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において懲役一年にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一) 修正損益計算書
株式会社 安藤
自 昭和49年4月1日
至 昭和50年3月31日
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(二) 修正損益計算書
株式会社 安藤
自 昭和50年4月1日
至 昭和51年3月31日
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(三)の一 税額計算書
昭和49年4月1日
昭和50年3月31日事業年度分
<省略>
<省略>
別紙(三)の二 税額計算書
株式会社 安藤
昭和50年4月1日
昭和51年3月31日事業年度分
<省略>
<省略>